夏の夕立 

地図から消えた村の記憶

夏の夕立

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車庫に敷いたコンクリートブロック

ブログの名前をどうしようかと考えていたけれど。

 

写真のコンクリートブロックは自宅の車庫で撮影した。ブロックはダムに沈んだ村の学校のプールの周りに敷かれていたものだ。

 

移住が始まってしばらくした頃、学校を鉄球で打ち壊わす作業が始まった。村の建物は全て撤去することがダム補償の条件だったという。

 

ある日、父がトラックにたくさんのコンクリートブロックを積んで帰ってきた。取り壊わされる学校のプールから持って来たらしい。全ての人が移り住み、全ての建物が取り壊されるのだから、地面に敷かれたコンクリートブロックを持ち帰っても何の問題もないだろう。

 

あれからもうすぐ50年が経とうとしているが、プールの周りに敷かれていたコンクリートブロックは水の底に沈むことなく家の車庫にある。

 

プールができたのは昭和41年。夏休みには毎日のように子供たちの歓声がプールの廻りにあった。遊び疲れるとブロックの上に腹ばいになってする「ずいずいずっころばし」。3時には入道雲が大きくなり夕立がやってくる。夏の太陽で熱くなったコンクリートからあがる雨が蒸発する匂い。プールから帰る頃の蜩の鳴き声。

 

全てがセットになって車庫のブロックに繋がる記憶。プールは完成から9年で役割を終えることになった。